Art in Kochiメイン特集(8-9月号) 美術館のなつやすみイチハラヒロコ展 プレイルーム。イチハラヒロコ・箭内新一 interview

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ichihara-1.jpgのサムネール画像

-- 7月24・25日の2日間はワークショップが体験できるということで、子どもたちがひらがなの積み木作品を並べていましたが、どんなことを体験していたのでしょうか?

●イチハラヒロコ(以下、●イチハラ)―  「積み木であそぼうーしりとりチャンピオン2010」では、50音と濁音・半濁音や拗音(ゃ・ゅ・ょ)促音(っ)のひらがなの積み木を2組づつ使ってしりとりチャンピオンを決めようということで、一対一でのしりとり対決をしました。2日間に分けて4戦づつ16組の方々が参加されました。4歳から低学年の子どもさんとその家族が多く、中には若者3人での参加者もありました。ひらがなが読める年齢以上であれば参加可能で年齢制限はありません。しりとりをたくさんつなげたほうが勝ちという簡単なルールで、積み木は2組あるので「ぎざぎざ」などのくり返しの音も作れるようになっています。対決後の片付け勝負も込みなので、たくさんつなげた子の方が片付けに時間がかかって、結果は1対1のひきわけになります。

― 今回の「プレイルーム。」のような参加型の作品ができたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

●イチハラ「プレイルーム。」は4年前から始まった作品で、京都国立近代美術館の学芸員の方からのお話がきっかけでした。当時、美術館に民間企業から託児所を作らないかという話がいくつかあったそうです。学芸員さんも美術館から遠のいてしまいがちな子育て世代の親子連れにどうやったら来てもらえるかという課題を抱えていたそうです。確かに、美術館によってはベビーカー禁止だったり、4・5歳の子どもは広い空間では走り回って騒いでしまったり、ふいに作品を触ったりしてしまうため、監視員がピリピリするので、子どもをつれての来館を遠慮する親御さんは多いのです。また、実際に託児所を作るとなると常駐スタッフが必要になる、入場料に上乗せがあるなど様々な問題が有りました。

 そこで箭内とわたしにオファーがありました。わたしたちは、「作品のようで作品ではない、展示だけど休憩所にも見える、そんな〝あいまいな空間〟を作れないだろうか」という考えました。
 例えば、文字の積み木自体は私の作品ですが、積み木にさわることができる。丸い畳や椅子も箭内の作品なのですが、気軽に座ってもらえる。「展示じゃなかったの?」という人もいれば、中には最後まで展示と意識しないでゆっくりして空間を味わっていく人もおられます。
 もしここにボールプールや滑り台などの室内遊具を持ってきて、本当の〝遊び場・キッズルーム〟にしてしまうのであれば、美術館でなくても大型ショッピングセンターに行けば同じものが有るわけで、そうではない美術館の中の作品空間に参加してもらいたいと考えたものなのです。

― 壁に展示してあるイチハラさんのことばの作品との関連はどのようなことなのでしょうか?

●イチハラ ことばの作品は、子どもを持つお父さんお母さん方にはピンとくるものを展示しています。例えば4年前に展示した、「ワンピースは120。」という作品では、120枚のワンピース??何だろう?と首を傾げる方もいらっしゃるかもしれません。子育て世代の親御さんは120cmのサイズのワンピースだとすぐに理解してくれます。次の年は、お受験ネタで、その次の年は1年生ならではのネタで新作を発表しています。4~6歳児さん、小学校低学年くらいのお子さんを持つ親御さんへ、年々成長して姿を変えていく作品です。

 今回のことばの作品は、全てお手伝いのことです。成長過程のうち4・5歳にはムズカしいかもしれないけれど、低学年の子にはできることを展示しました。お手伝いは生活力であり生きる力だと言うところに結びついています。
 ことばの作品だけでなく、例えば白いボックスの作品は今回の新作です。丸い椅子は去年の作品、中には以前展示されていて途中からひっこめて展示してないものもあります。
どんどんマイナーチェンジをくり返していますが、畳と積み木はいつもあります。全部で1つだけどあいまいな空間全体、それが「プレイルーム。」という作品です。


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ichihara-6.jpgspace.gif― 「プレイルーム。」の他に、イチハラさんのことばの作品で参加型のものにはどんなものがあるのでしょうか?

●イチハラ 本展と同時開催で、グラフィティ(高知市北本町)での個展「デビューがピーク。」[ 7月28日(水)~8月15日(日) ]を開催するのですが、作品展示の他に「恋みくじ。」を販売しています。
実際に引くことができるおみくじで、これもことばの作品です。
 大阪に布忍(ぬのせ)神社というところがあるのですが、宮司さんはもともと彫刻家のかたです。おみくじは、良いことと悪いことが1枚の中に必ず書いてあるそうで、それは大吉でも大凶でもそうなのですが、ほとんどの参拝者がおみくじの吉凶の部分しか見ていないことに疑問を感じたそうです。そこで「吉凶の無いおみくじはできないだろうか」とお話をいただき、できたのが「恋みくじ。」です。おみくじの内容は、わたしの作品テーマでもある「愛と笑い」に関するもので、見る人の最近の出来事によって吉凶の受け取り方が変わるものになっています。これは現在、全国6カ所の本物の神社にて販売されています。

― ことばのアーティストとしての活動は、物づくりの作家と大きく違うことが多いと思うのですが、ことばのアートならではの経験などはありますか?また、広告の仕事とアート作品の明確な線引きはどこなのでしょうか?

●イチハラ モチーフがことばなので、様々な展開ができます。おみくじもそうだし、ラジオで作品を読み伝えることができたりします。FAXでだって送れますね。ことばならではのアウトプットの方法があると思います。
 普段、常にクロッキー帳を持ち歩いていて、スケジュールや雑事など、何でもこれに書き込んでいます。二十歳の時から書き始め、今では139冊目になっているほどの〝ネタ帳〟なのですが、この中に作品のアイデアがたくさん書き込まれています。いつ何の展覧会用に考えた作品なのかがこのクロッキー帳を見ればわかります。
 「新作」として展覧会に使ったものがどれなのかがわかるということは、反対に使っていない「未発表作品」がどれなのかもすぐにわかります。
 「広告」と「作品」の違いは簡単です。「広告」はクライアントのいる仕事なので、選ぶ時に自分に最終的に決定権がありません。自分にとっては「え?それを使うの?」と思うものが、クライアントの意向で選ばれたりします。(苦笑!)「作品」は自分がこれだと思うものを選んで発表します。

― 「イチハラさんの作品だ!」とパッと見てすぐわかるあの書体についてですが、こだわりやエピソードなどはあるのでしょうか。

●イチハラ たて書きにした時にきれいに見える書体を選びました。昭和45年から使われている書体なので、これから先もずっとなくならないいいものと考え、最初に決めた書体をずっと使っています。作品に限らず、何でも最初に決めたことは変えない方が良いと思うほうなんです。だから作品の色も「白と黒」と決めています。
「カラフルな色を使ったら良いのに」と言う人も居ますが、色を選ぶときに意味をつけたりしないといけなくなるだろうし、本当にその意味があったのかと考えたりすることを考えたら、余分なものはなるべく入れないでシンプルにしていて、そのほうが良いと思います。
 作品のTシャツも7月17日から箱根彫刻の森美術館限定で販売していますが、大人用が黒地に白文字、子ども用が白地に黒文字にしました。
 Tシャツの作品は前に「人生思い通り。」っていうことばがプリントしてあります。子どもがTシャツに「人生思い通り。」。。。
 
― 子どもに関しては言葉の意味が分かってない感じがして、日本語で「万引きするで。」と書いた紙袋を海外のショッピングセンターで外国人に配った作品を思い出しますね(笑)。

●イチハラ  ありがとうございます。今回のグラフィティの個展に合わせて8月13日(金)にはART NPO TACOから『イチハラヒロコの愛と笑いの日々』という初めてのエッセイ集も出版します。新しい挑戦でドキドキしています。グラフィティでは、ここだけのサプライズもちょこっとあります。ご期待ください。


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