
--nBoxは最初どのように始まったのでしょうか。
都築 最初は2001年に試みを開始しました。当時はnBoxを7年で終わりにするとは考えていませんでした。
nBoxの納屋は100年ほど前から今の場所にあり、長い年月かけて積み上げられたたくさんのガラクタを運び出す作業から始まりました。
春に始まり秋にやっと空っぽにすることができました。そこから修理に取りかかり、屋根の部分の修理は難しいため専門家に依頼しましたが、
内部は自分達の手で作業を行い、2002年の春についに事務所部分の完成に至り、1階はデジタルデザインの事務所として機能する事になりました。
それから半年間の作業お休みの間、作業を通して様々なことが私達の胸をよぎり、この空間に流れる過去から未来への人々の想念のようなものを感じました。
その昔、集落の入口に当たる場所でもあったため、映画を上映をしたこともあったり、サトウキビの農作業をするなど、人々が集まる場でもありました。
その上で、ここを単なる私的空間ではなく、多くの人が集い楽しめる空間にしていくことが、私達に課せられた役割のように考えるようになりました。
そして、「アーティスト・ブック展」を開催しようというアイデアが生まれ、この展覧会に向けて修理の作業を再開し、大変な日々の末、展覧会直前に完成に至りました。
nBoxの「n」は数学用語で用いられる自然数全体を表すnで、様々な可能性を持った「n」。何かに特定せず多目的に使われる建物(=Box)という意味合いです。
自分自身が美術をやって来た人間なので、自然とまずは展覧会を行おうという発想につながりました。
nBoxの展覧会がすべて個展ではなくグループ展なのはこの為で、7年間に全部で34の展覧会を開催し、次回「ファイナル展」で35回目の展覧会となります。
--nBoxといえば「アーティスト・ブック展」というイメージがありますが、何故「本」になったのでしょうか。
都築 芸術家による本の制作と展示というテーマに強く引かれるものがありました。
最初の第1回が「アーティスト・ブック展」だった事もあってnBoxとして続けて行こうという思いも有り、全8回「アーティスト・ブック展」を行いました。
本の形になることでその作家の考えや感覚を凝縮して見ることができますし、
作家自身も編集をすることで、自分の過去の作品や活動の全体を振り返り、再び考えを体系的に整頓することができるのです。
この展覧会には県内外や海外からも作品が集まり、読む本・編集する本以外に、本の写真・オブジェとしての本・アルバム・絵本等、「本」をテーマにした多様な表現が集まりました。
--「アーティスト・ブック展」以外にはどのようなグループ展が開催されたのでしょうか。
都築 nBoxのグループ展は、大きく分けて2種類ありました。
美術を専門としている人達の楽しめる実験的な展覧会と、田園の田舎という立地条件も考え地域の方々も気軽に参加できるような大衆的なものをと考えた展覧会です。
「おひなさま展」「手の仕事展」「ポストカード・Tシャツ展」などは後者で、毎年続けるうち「例年のおひなさまを順にずっと買った」という地域のお客様もおられました。
作家側の収穫としても毎年出品するうちに、例えば本を作る事に慣れて行ったり、「こんな作り方でも良いのか」と発想に自由度が増して行ったり、
Tシャツ・ポストカードに関しては、印刷場所を見つけたり、量産するための技術手法が育ちました。
特に海外から出品された作品はそのあたりの技術が幅広く、なおかつしっかりとしたものがあり、見る側もそれらによって目が肥えて行ったように思います。
そのようにして発展・連動して行くことができ、若い人が学ぶことができる場所となったことは、ギャラリー本来の在り方としてもとてもよかったと考えています。
これらの開催に至るまでに、私達の経験として1995年から2004年までに都築造形教室の企画で行って来た「ZOUKEI展」が大きな役割を果たしました。
始めは造形教室の卒業生に声をかけて「Mail Art展」として始まったもので、卒業後様々な分野に羽ばたいて行った生徒達に声をかけて毎年開催しました。
今も作品を作っている人もそうでない人も、年に一度ハガキ1枚(または数枚での組作品)ならば気軽に出しやすいと考えたものでした。
徐々に、規定はハガキや平面に限定しなくなり、小作品であれば可として「ZOUKEI展」へと変わって行きました。
「ZOUKEI展」は10年継続を目標としていたため、10年目で完結をしましたが、
nBoxの企画グループ展での、たくさんの作品を扱う段取り、作家への参加案内、広くへの告知などは、「ZOUKEI展」のノウハウがあって実現できたことと思います。
一方、「対のかたち展」「旅の途中」「やわらかい壁」「物語の中へ展」「子どもの時間展」「家族のかたち展」「GARDEN −心の庭展」「時の旅人展」などは実験的な展覧会で、
作家も私達も収入源にはならない展覧会ですが、ずっと開催時にはパーティーを無料で行ってきました。
これは、高知のような地方で活動していると、学校卒業後はなかなか作家が一度に集まる場所が無く、作品を作ることについて話をする機会が無いため、
展覧会を足場にそのような場が作れればという思いでした。
またパーティー以外でも、これら実験的企画展でnBoxを開けて展覧会を開催することで、情報が交差し、文化が発信され、次の世代に対しての接点が生まれるという効果はあったと思います。
"作品が人々をつなぐ"という視点です。作品を最初見た時にはなんだかもやもやとしたよくわからないまま通り過ぎたりしても、後で気になったり、
「アレはそういうことか!」と後に急につながるような、心に引っかかるものが生まれる。作品とは本来そういうものだし、自分の作品もそうあって欲しいと思います。
また、実験的かつ大衆的にもわかりやすい要素持ち合わせているものも有りました。
「おひなさま」も"人の形""対の形"と考えると実験的な展開が可能だったり、
「アーティスト・ブック展」では何度も開催するうちに解釈に広がりができていきました。
本は形にするのに時間がかかるために、「今回出品に間に合わなくても次回や何かにこのアイデアを使おう」と発想が残ったり
実際に次回に出したり、何年越しでついに出品したという人も居ました。
形にするタイミングが合わなくても、想いがあり続けることで、新しい展開が開けるきっかけになっていったと思います。
最終展として11月に開催を予定している「FINAL展」では、テーマ・サイズ等は自由で、今までに出品していただいた方達全員に参加案内を送ろうと思っています。
--nBoxがなくなることになった経緯を教えて頂けますか?。また今後はどうなるのでしょうか。都築 元々は、7年目で終わりということではなかったのですが、色んな条件が折り重なって終わりにしようということになりました。
自分達がわくわくする盛り上がるものと年齢的・体力的な事柄とのバランスは、何かを続けて行くために必要不可欠なものだと思いますが、
nBoxとしてそれが継続に傾くか終わりに傾くかという時に、デジタルデザインの事務所のほうの拡張の話がありました。
建物としてのnBoxの名前は無くなり、今後はデザインの事務所としてより広がりを求めて生まれ変わります。
けれども、造形教室としての仕事、作家としての仕事など、普段の全部を含めて自分であったり、日常の活動の中の1つがnBoxであったため、
私自身の中では違うことが始まるという感覚では無いし、今後もnBox企画室は残して続けて行きます。
色々な形で美術やアートに関わって行く人のモデルケースの1つとして自分があれば良いなと思っています。
地方では何かの専門分野だけに特化してやるのでは続かなくなることも多いのですが、たまたま高知に生まれ、たまたま高知の大学へ行き「高知を拠点に美術で活動する」という思いが強くありました。
後に続く人のためにも資料等になるものをつくって行きたい。
人生の終わりが決まっているからこそ、その人が亡くなっても影響力のあるものなどは断片的に残ります。今でも祖母や親しい人達の言葉を思い出す自分が居たりし、見守られている感じがする時があります。それは生命のリレーみたいなもので、自分の子どもから子どもへ伝わって行くものも見て来たし、自分の親を見送るという事もしてきました。
そんな中で自分のやって来たことが礎として何か残れば、その1つがnBoxであればという思いです。

nBox(エヌボックス)
TEL/FAX: 088-863-7598
E-mail: info@zoukei.org...
-information- 都築造形教室
都築造形教室は、三十数年前に高校の時の同級生からの依頼を受けて始まりました。
最初は週1回、10人くらいの子どもたちの集まる教室として、借家の台所からの出発でした。
現在では子ども対象のコースの他、受験対応の高校生コースも開設し、多くの卒業生を美大・芸大に送り出しています。
自分の世界を持っていることは大切なことです。
それをイメージする力、形にする力が何か1つあれば、困難な環境に直面しても乗り越えて行くことができます。
生きる力・生きのびていく力、その1つとして美術や造形があると考え、
未来に向けてたくましく創造力豊かに育つ子どもたちをお手伝いできればと思います。
http://zoukei.org/
都築房子 Fusako Tsuzuki
造形教室主宰
高知県展招待作家(立体部門無鑑査・審査員・功労者表彰)
土佐中・高等学校講師(1972〜1999)
高知福祉専門学校講師(1990〜)
高知大学講師(2006〜2008)

















