interview -フリーペーパー版 6.7月号 - NO BORDER 4

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img164.jpg来る7月1日(水)より、高知県立美術館にて
高知のアーティスト・カタログ 第四章 NO BORDER 4 が開催される。

1作家 1ブロックの連続個展スタイルで前期・後期各8名、計16名の作家を紹介する高知県立美術館主催の企画展だ。
2000年に始まり、今回で4回目の開催となる本展について、担当の学芸課チーフ 松本教仁氏にお話を伺った。




noborder4.jpgーまず、NO BORDER展のこれまでの経緯を教えて頂けますか。
 
2年ぶり4回目の開催です。
この企画の始まりは、1999年に開催した「ヤンガーアート2000-1展」からです。
実は、この「ヤンガーアート」というタイトルは、高知県出身の木口木版画家、故・日和崎尊夫へのオマージュなのです。1960年代の高知で精力的に活動を繰り広げた「前衛土佐派」に対抗して、日和崎ら若手作家が中心になって開催した"ヤンガーアート展"から名称を拝借したものでした。もともとは1回限りの予定で開催したのですが、高知の若手の作品をもっと見たいとのお声を多く得て、新しく始めたのがNO BORDER展です。
ヤンガーアート展のイメージとしては、平面作品作家に限定された感が強かったのですが、NO BORDER展では、表現ジャンルで区切る事はせず、画家以外も紹介される企画であるという意味合いからNO BORDER(境界なし)と名付けました。2000年の第1回、2002年の第2回の後、2003年にはスピンオフ企画として観客とのコミュニケーションを主とした公開制作ワークショップ〈5 ROOMS〉展も開催しました。その後も2007年の第3回を経て今回へと続いています。間が2年あるのは、固定の2年定期ではなく、発掘・紹介をするべき新しい作家がどのぐらい出そろうかなど、状況に合わせてその都度開催しています。
 
noborder4.jpgーこれまでと違う傾向や趣きなどはありますか?
 
前回のNO BORDER 3展は、全国的な流れをうけてカワイイ系やキャラクター的表現のものが多かったのですが、今回は見た目のテイストとしてはそれ以前の傾向に戻る部分もあって、逆に幅の広い表現が見られて、さらに混沌としているように思います。
作家の選抜は、特定の表現傾向で括るのではなく、この2年間にチェックした250を越える個展やグループ展などの県内企画から、"自分の方向性を持つ人"を選んでいます。作家本人の意図・無意図に関わらずですが、今回の出品作家はどの人も自分の方向性をしっかり持っている方々です。 会場はブース形式なので、個展が一度に8つ見られる"アートの見本市"とイメージしていただければわかりやすいと思います。
通常のグループ展では、隣り合った作品同士が影響し合ったり、展示空間が重なったりして、個々の作品が本領を発揮できない場合がありますが、今回はそれぞれ仕切られたブース内で展示を行う為に、そのような不都合はありません。純粋に作家の力量が試される場となります。また、今回の関連イベントとして、ギャラリストの小山登美夫さん(小山登美夫ギャラリー)に講評&レクチャーをお願いしています。小山さんはこれまで若手作家の発掘に尽力され、村上隆や奈良美智、蜷川実花など、現在メジャーとなった作家を数多く世に送り出しています。前回のNO BORDER3展では柳沢秀行さん(大原美術館学芸課長)による講評会開催が会期中急遽決定したために、一般の告知ができず、主に出品作家や関係者を対象としていました。今回は事前に電話で申込をいただければ一般の方も聴講ができますので、興味の有る方は是非参加して頂ければと思います。

作家の方には、このような機会を生かして、自らアクションを起しネットワークを広げて行くきっかけにしていただければと思います。
チャンスというものは向うからはなかなかやって来てはくれません。やはり自ら動く人がチャンスを多くつかんで行きます。様々な世の状況と自分の個性とを、どのように無理無くすりあわせていくのか、高知の作家ももっと活動の戦略性を持ってもらいたい。そのための出会いの場としても美術館が機能できればと考えています。

noborder4.jpgー戦略・計画性と言えば、展示プランについても美術館から作家に具体的な依頼などをされるのでしょうか。
 
展示プランについて、私からアドバイスはしますが、主に展示スペースや電気配線、鑑賞者の安全確保のチェック程度に留めています。表現上のコンセプトや出品作品数の増減の指示などは行っていません。
県立美術館は公共施設なので、普段美術展を見慣れていない方も多く来場される事を想定して、展示作品と鑑賞者の双方の安全を確保する必要があります。例えば県内のギャラリー等の多く見られる床に直接設置しているような作品は、お年寄りの方がそれにつまづかないように、また作品も踏まれて破損しないように、事前に環境を整備することに気を配ったりします。その点が、作品鑑賞に慣れている観客が多い県内ギャラリーと当館で違ってくる部分です。
作家には、鑑賞者が作品を見ている空間の状況までを視野に入れて、全体の展示構想を考えてもらうよう依頼しています。
 
 また、小山登美夫さんからはビジネスとしての作家活動のビジョンについてなど、美術館側持つ視点とはまた違ったご意見を聞けるのではないかと思います。
美術の評論や研究を生業にされている方々は、美術の歴史や時代背景などを"線"の流れの上でとらえ、その線を組み合わせて"面"を構築することにより、多角的に作品を分析します。作家の場合、最初は内面の衝動である"点"から始まって、創作活動を続けるうちにその点が結びあって"線"になり、やがて"面"へと発展して行きます。これは一般の観客がある作品をみて、それから自分自身の体験をふと思い起こすような"点"としての見方とはスタンスが異なる、トータルな視点のものです。
分野が違っていても、トータルな視座を持つ人同士というのは通じ合うものがあります。臆する事無く是非こういう機会を活かして意見を交換してもらいたいですね。
昨今は、美術館で展覧会を行ったところで急にメジャー作家に祭り上げられることはありません。情報の少ない地方おいて、展覧会等は新聞やニュースに採り上げられ易く、すぐ話題にはなるのですが、その時点の評価が以後の作家活動に具体的には結びつき辛い現実があります。もっと作家活動を回転させていくために、ビジネスの視点を持っても良いと思います。

noborder4.jpgー「高知の作家は状況に恵まれ過ぎていて○○だ」という話題は他でも度々でてきますね。
 
頑張って作品を発表すると、作家の絶対数が少ない為に地元メディアに採り上げられ易い反面、それが職業として直接生活に結びつかない為に、結局高知を離れたり、地元の公募展に毎年出して、後は個展を何年かに一度開催して満足するというスタンスに落ち着く作家も多くなってます。
けれど、この高知の作家を紹介するNO BORDER4展には "高知も捨てたものではない" ぞという裏テーマがあります。

最近はカフェ系のギャラリーも非常に増えて、生活レベルにより近いアート、作家との距離が近しいスペースが増えました。本展のパンフレットにも作家のメールアドレスやWEBサイトを掲載し、鑑賞者が作品を見た後、直接作家にコンタクトできるようになっています。インターネット上は批評や批判の飛び交う場所として消極的にとらえられがちですが、個人から個人へアクションを起こすツールの一つとしては、とても有益なものでもあります。地方からネットを介して個人レベルで発信のできる時代になって来たと思います。本展は16人の作家の作品を一度に見ることが出来るだけでなく、作家と観客の直接の接点となる機会でもあります。
作家の方にはこういう機会を活かして自己演出術を身につけたり、自身の活動について貪欲になってもらいたい。

例えば、美術家の森村泰昌さんは、テレビ企画の一つで画家フェルメールの作品「画家のアトリエ」を再現する作品を発表し、それを起点として様々なバリエーション作品を展開したりもしています。
どんな人間でも体は1つ、時間は同じです。いかに工夫して効率的な表現活動を展開して、その後につなげるか。いかに自分の表現したい事とチャンスをすりあわせるか第一線で活躍する天才と称される作家には、大抵敏腕なマネージャーがついていて社会と作家をつなぐ役割をしていますが、天才も秀才も、膨大な努力が必要とされることには変わりありません。活動の中でそれだけのエネルギーを投資できるテーマや対象に出会えるかも大事です。 "最近の若者は怒らない"とよく言われますが、それは怒ることについてリアリティが感じられなくなっているからだと思います。世の中の常識など何かに反対や対抗するというのは、既存のものに対してある意味NOと言っていれば済むことであり、自分でオリジナルな価値を作り出す必要が無い分、簡単なことです。幕末期とは違って、NOと言うことに生命をかける必要のない現代では、NOのリアリティが霧散してしまったのでしょう。
そんな中で、新たな価値を見出し作りだす人が作家であり、美術の世界に関わる人々、ギャラリストであると考えます。

かつては、美術を進化論的に考えて、美術の価値の本質を突き詰めるための論理に主軸が置かれていましたが、その図式が崩壊して今や"なんでもあり"の現代です。逆に、作家の生き方そのものの魅力が問われているのではと思います。
 

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